続 喫茶えぜこ

つづき(前回から読む

お店のオープン予定地は、宇治市がようやく下水道工事を順次行っている地区だったのです。
間もなく店の前の狭い道路も工事が始まり、通行できなくなる、と役所の方から説明をうけました。(もしくは通りにくくなる)。
直ちにお店をオープンさせても、下水道が通ればトイレ工事などは水洗用にやりなおさないといけないし、
営業していても工事の音や通行規制でお客さんは近づきにくい・・。


目の前の道


そこで仕方なく我々の計画は下水道工事が終わるまで一旦保留し、全てすっきりしてからオープンさせましょうということになります。
この時点では私も入江さんも、待たされても半年ぐらいだろうと考えていました。(役所からの通達による)

しかし
道路工事が待てども終わらないのです。掘って埋めての繰り返し。
掘る度に何か出て来たそうです。歴史地区だからね・・。という説明は何度も聞きましたが、結局何が出て来たかは教えてもらえない。
どんどん延び延びになる工事。こんなことなら・・。はい、何も出来ないです。

「souonカフェ」とか。ありそうじゃない?
「喫茶、小路(こうじ)」なんかもいいですね。

自然と会話もゆるくなります。




・・・
およそ2年がたちました。

その間にガス管工事も新たに加わり、様々な業者がやってきては道をザクザクされました。工事業者の方を相手にコーヒーを出せば結構いけたのかもしれません。
もうすぐ終わる、もう間もなく完了です、とじらされ待たされる2年は感慨深いものがあります。
普通のクライアントなら、怒るか、諦めるか、旅に出るかだと思いますが、入江さんは全く焦るそぶりも見せず、でーん、と構えておられました。

「今のうちに、もう少しケーキの試作しとこっと。」
「畑で取れたシソのジュースを作ったので飲んでみて。」
「東京で素敵な照明を手に入れたから、これ店内のどこかに使えないですか。」

まさにどこ吹く風で待ち時間を満喫しておられたのです。
こういう方が佇む喫茶店というのは、自然と「そういう」空間になるはずで、
我々が過剰なデザインをせずに、色んなものを遊ばせておく余白をとっておくだけで、優れて安定した空間へと辿り着くに違いありません。


そのようなわけで、ついに工事が始められるという時には、入江さん、石田工務店さん(大変ご無理を聞いていただきました)、我々には、目指すゴールがバッチリ共有出来ていました。

と、思います。

「やっと工事がはじまりますが、もう終わってしまっていたような気がしますね」
「うん、そろそろ別のお店とかはじめたいわー」
そう、そんな感じです。



ついに工事スタート


「はやくっ壁を珪藻土で塗りましょうよ!」
まだ下地ができてませんから。
「次は床を何色で塗装したらいいの」

と、フライング気味な入江さんに巻き込まれるように、自らも施工に参加してガサガサとみんなで仕上げていきました。
自分たちで土壁(珪藻土)を塗ったり、ペンキを塗ったり、照明を付けたり、過去を振り返ったり、一気に完成まで作り上げていきます。



左:手伝いの長谷川君 右:入江さんのご主人



二階席


吹き抜けから見下ろす


完成


時間もかかり、その他ここには書けない紆余曲折もありましたが、素敵なクライアントと工務店さんに恵まれ、
予想以上に落ち着く空間になったと思います。

皆様、長らくお疲れさまでした。でも入江さん達にはこれからも、ですね。
宇治で一番長居したくなる喫茶店、えぜこをどうぞよろしくお願いします。



喫茶えぜこ

一級建築士事務所expo 山根