G邸 

8月に竣工させて頂きました、新築住宅、G様邸を紹介させて頂きます。

G邸外観




2階 リビングダイニングを中廊下から見る


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Gさんご夫婦は、滋賀県大津市に住居を構えるにあたって、我々expoに設計依頼をしてきて下さいました。
まだ購入する土地も決まっていなかった頃のことです。

お会いして抱いた印象は、夫妻とも、とてもおおらかであり、ご自分達の住まいへの期待と要望を明確にお持ちだということでした。

「村上椅子さんのお宅のような家が好きなんです、屋上テラスがあって、懐かしいビルのような雰囲気もあり、建売住宅にはない素材感や色のある生活がしたいんですよ。」
とご夫婦。我々の過去の仕事を気に入って下さっていて、特命で頼んできて下さいました。

屋上ベランダを作ろうと思うと、今は京都市内ではなかなか難しいので、大津というロケーションはバッチリです。

「expoさんのデザインされた場が、どこもそれぞれに好きなので、こんな風にして下さい、というより、我々のためにどんな建物を作って下さるかを楽しみにしてます!」

おお、褒めて下さりつつもさらりと丸投げしてこられましたね、了解です。

でもまずは土地を決めないことにはですねー・・・。

「ここ、どうでしょうか!? ちょっと狭いので家が建てられるのか不安なのですが。」

は、早い! 土地を一緒に見に行かせて頂きます。




成る程、間口がかなり狭く(4m以下)、奥行きが結構ありますね、京都にはよくありそうな土地形状ですが、
大津市でもこのように古い住宅が密集して建ってる場所だとこのような土地が出現するわけですね。
狭い、というのは一つのチャームポイントですから、むしろ素敵な住まい方を提案出来ると思いますよ。

「そうでしょうか。でも大丈夫と仰るならこの土地を購入します!」

あ、全然悩まれないんですね・・。
でも、小さく住むことのメリットは本当に沢山ありますから。
土地代もそうですが、光熱費、税金、無駄な物が増えない、家族の距離が近い、掃除が楽、などなど。広い家では実現出来ない快適さというものもあります。

もちろん、Gさん達の生活にあわせて、小さくても狭さを感じないような、生活が楽しくなる建物に出来るよう工夫しますので。

それでは、と、早速この土地を購入して頂き、プランの打ち合わせを開始します。
将来、お子さんが出来るということも想定して、子供とどのように過ごす場所があれば良いでしょうかねえ・・

「えっと、実は、最近妊娠いたしまして、来年には一人目が産まれる予定なんです。やはり子供からの目線からも家を考え直していきたいです。」

うぉっと。おめでとうございます。先手先手で物事が進みますね! 住まいへの意識もより家族として方向性が具体化するので、引き締まります。



というわけで、この狭小敷地を最大限活かすために、3階建ての鉄骨造とすることにしました。

この土地が商業地区だったので、近隣の家がいつ大きなマンションなどに建て変わるかはわかりません。
そのようなことが将来あるとすれば、陽当たりの問題や、視線の問題、風は抜けるのか、という不安がつきまといます。
だからといって、完全に内部にクローズした住宅にしてしまうと、現段階での気持ちの良い隣の緑や青い空や光を早々と切り捨てることになりのでもったいない。

我々としましては、光、通風を確保するのは大前提として、狭さや小ささを感じさせないよう、どの部屋からも外の緑が見れる中庭を取ること、そして部屋の高さ方向にメリハリをつけて心理的な伸びやかさを感じられることを設計の柱にして、考えていくことにしました。


・・・そんなある日


「突然ですが、今年9月から仕事で海外に一年間行く事が決まりまして、早く家を完成させて引っ越したいんですよねー」と、Gさん夫妻。

ええっ、新築と同時に海外に・・。

我々の斜め前を走っておられるようなGさん御夫妻。
色んな出来事や変化を飄々と楽しんでおられる様子がじわじわと伝わってきます。素敵です、この柔軟性。

とか言ってるとそろそろお子さんも産まれるんでしょう、こんなにお腹も大きいし・・(笑)。

「そうですねー、って、あ、陣痛がきたー」

って本当に今産まれますか! (←実話)


おめでたいこと続きです。なんだか、こうなると私も家族の一員のような気がしてきました。
可愛い子供のためにも住居もポンポンっと建てちゃいましょう。

という展開で、ポンポンと急ピッチで建て方が始まりました。
・・・というのが理想だったのですが、実際の工事に関してはやはりじっくりと、安全に。


天気の良い日にクレーンと鉄骨は絵になります。


鉄骨造にした主な理由は一階に駐車スペースを作るのに木造より有利だということがあります。
また、自由度の高い間取りに出来るので、そのメリットを活かし、建物内に閉じ篭った気持ちにならないように、視線に変化のあるプランを採ります。

では完成した建物に入っていきます。

外から建物を一見すると、普通の単純な箱のようで、周囲に対してオープンでないように見えますが、
玄関を入るとすぐに中庭があり、1階まで十分に光が入り込み、目に優しく一本の木が迎えてくれます。


玄関を入ったところ
中庭の存在によって、締付けらるような圧迫感がない。奥には書斎。



書斎


そして、一階の奥にはご主人の仕事場も兼ねる書斎がありますが、
天井の高さを廊下より上げることで、ある一定数以上の本棚に囲まれる醍醐味を存分に味わえる、本好きにはたまらなイ部屋になってはいますが、
実際は書斎というより男の趣味の部屋にするつもりのご主人でした。先日すでにラジコンが何台か置かれていました。ラジコンは屋上でされるそうです。
本もおいて下さいね、ご主人。


書斎の床、天井、壁は全てラワンベニヤのオイルステイン染めで統一し、渋い味わいの部屋に。
このダークブラウン色と庭からの緑が美しく引き立てあいます。



2階にリビングダイニングキッチンと、スキップフロアで少し上がった位置に寝室があります。
リビングの天井高さを十分に取り、奥の寝室は書斎の上に位置するので天井高さを低く抑え、上下への空間の変化が身体的にも視線的にも動きをうみます。


リビングの窓からは、隣の緑が借景されている。



キッチンも全てオリジナルで制作。扉などはラワンベニヤオイルフィニッシュ仕上げで懐かしいテイストに。
正面の淡いグリーンのタイルをポイントに使い、シックに落ち着き過ぎないようにしました。
キッチンは大きな窓に面していて、外の様子を伺えると同時に、北面の安定した光で調理を楽しめます。



3階には個室と奥様のワークスペース、お風呂と洗面所。
奥様のワークスペースからは、開放的な景色が見れるので、家事がすすみます。のはずです。
左の階段は、屋上に出る階段。実は屋上からは、ぎりぎり琵琶湖が見れるのです。
結果的に大変恵まれたロケーションでした。

3階にお風呂というのは最後まで悩み、打ち合わせも重ねましたが、すぐに洗面所からデッキに出て洗濯物を干せたり、外の景色を見ながらお風呂に入れる、といった開放感を優先させました。


お風呂と洗面所から直接出れるデッキ。風の抜けが良く、洗濯物も不安無しです。


Gさんご一家も無事に引っ越され、大変、楽しんでお住まいになっておられるようでした。
特に0歳の息子さんから、笑顔で感謝されたのは、思い出です・・。気のせいかもしれません。


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この家をすぅーっと吹抜ける夏の終わりの風のように、Gさんも笑顔で山へ芝刈り、ではなく海外へと発たれました。

「早くこの家に戻ってきたいですよ−」

そうですよねっ、一年などあっという間です。その間私が住んでおきましょうか。

実際、狭小住宅のカテゴリーに入ると思いますが、小ささを感じず、光の明暗コントラストが楽しめる、健康的な家になりました。

そして、Gさん達なら持ち前の柔軟性で、どんな家にでもアジャストされていくとは思いますが、この家に住まわれることで、
ワクワクするような時間を少しでもプラスしていって頂ければと思います。



一級建築士事務所expo