村上椅子邸

村上椅子御夫妻とは、数年前に友人の紹介で知り合いました。
椅子張りの仕事をしておられます。

「すべてがスタイリッシュというよりも、その中になんかこう温かみがあるというかモッサイというか、素朴というか...。そういう感じがいいんです。」
「モッサイ家ですね、わかりました。」
「そこだけをピックアップしないで下さい。」
こんな村上さんの一言から始まり、幾度となく真面目な打ち合わせを繰り返して、2007年10月、大変気持ちのよい作業場、ショールーム付き住宅、村上椅子邸が完成しました。
防音性能の高いワークスペースに、遠くからでも目を引く2階のショールーム、広い屋上庭園と共に自然光と風を豊に楽しめる3階のリビングとキッチン。自分で言うのもなんですが、こんな家に住みたいなあ。

物作りの仕事をしておられる方達なので、当然家作りには最初から興味津々。プランも入念に打ち合わせ、工事着工後も、折角なので内装工事などには積極的に参加していただきました。

まず、布張りの技術を生かして、内装の壁面に椅子生地を張ってもらうことにしました。単に壁に張るだけでは面白くないので、扉や、扉枠など、普通ありえない場所も全部布で包んでいただくことにします。
「この扉もドアノブを残して全部包んで下さい。」←言うのは簡単。
「えー!?出来たら面白いですけど‥。」  
「出来ます!」
この作業は、生地の厚みやドアと枠との隙間の関係などかなり緻密に計算し、実験を繰り返して行われました。実際大変手間がかかり、苦労されたので(こちらは見て楽しんでいただけでした)、もう二度とやらない、と仰ってます。いやいやそう仰らずにまたやりましょうよ! しかしその甲斐あって、他にはない、少し狂気じみたほんわか空間が出来上がりました。素晴らしいです。


また、3階リビングの床のフローリングも自分たちで貼ることにしました。普段よく見かける縦方向の単純なフローリングなら施工もそれほど難しくないのですが、今回は懐かしくも気品を感じるパーケットフローリングを選んだので、細かい加工が必要だわ、貼る順番にも頭を使うわで、汗だくになりながら、もう二度とやりたくない、と今度は我々が思いました。
「誰がこんな面倒なフローリングを選んだんだー!」
「エキスポさんじゃないですか。」
「うぐっ‥。」
しかしこちらも納得の仕上がりで、この部屋に入る度に今でもウキウキします。

最後には、建物前面の外構部分も協力しあって作る事にしました。ブロックを沢山買ってきて持ち帰るという一番地道で体力の必要な仕事は全て村上氏におまかせし(ありがとうございます)、セメントをこねたり、ブロックを設置したり、門扉を作ったりと、皆で協力してついに外部も完成です。お疲れさまでした。

「いやー、こうやって外から家を眺めると、左向きに座る椅子のような形ですね」
「‥。最初からそう説明していたじゃないですか!」
「そ、そうでしたね! ガラス越しに見えるショールームの中の椅子も左向きに並べ直してきます!」

本当に魅力的な村上御夫妻です、こんなお二人のおおらかさと、熱意の結晶がこの村上椅子邸です。
今後とも宜しく御願いいたします。
村上椅子さんのwebsite http://murakami-isu.net/index.html


expo 山根
一級建築士事務所expo http://www.expomade.com/