Rita

さて、先日オープンさせた美容院「Hair Saron Rita」を紹介させていただきます。
場所は京都御苑の南東角の対角、つまり寺町丸太町の交差点の南東、青山ビル2Fにデビューとなりました。

カットスペース



ビル側の待合いスペース



お話を頂いたのは09年末、gris-grisのノリさんからの紹介でした。
「私の親友のミチコが美容師として、独立したいっていうの、絶対いいお店にしてあげて」
相変わらずハードルあげてきますね。どんな方なんですか。
「見た目は田舎のヤンキーみたいな子やけど、中身はしっかりしていて且つ可愛い性格よ!」
褒めてるんですよね。楽しみだなあワクワク。・・って情報それだけですか。


そして数日後、彼女から最初に送られてきたメール。

「※はじめまして☆※三智子です!※ノリさんから紹介してもらいました※いつかご都合が良い時※にお会いできますかー\(^_^=^_^)/※※」
(注 ※の部分はdocomoの絵文字によってピカピカ動いている)


これを見た瞬間、目がちかちかしました。
今までの自分は携帯メールの機能の3%ぐらいしか使えてなかったかもしれないと思いました。
田舎の気さくなヤンキーを想像してしまいました。
それから三智子という名前はうちの母と同じなので(この漢字の人は少ない)親近感がわきました。


・・・一体この方はどのようなお店のデザインを望んでおられるのだろう、と予想も出来ないまま打ち合わせをさせて頂いたわけですが、
中身は驚くほどさばさばスカッとした大人の女性だったのです。
さくさく仕事が出来そう! (実際凄腕です)
田舎のヤンキーくささって何?という感想でした。
すみません、好き勝手書いてますね。(許可得ています)

でも、その、デコメだらけのメールは30超えた大人の女性としてどうなのでしょう。


「えーっ☆※ そんなさみしいメールをもらって※嬉しいですか?※(*^ー゚)v ブイ♪ じゃ来週は候補物件の※で!」(←最後の※にはビルの絵が入っていた)


メールの印象と実際会った印象がこんなに違う人も初めてです。人はメール内容から判断したら駄目だなあ。
というのも三智子さんは学生時代は建築を勉強していて、好きな建築家といえば谷口吉生、と即答してくれたました。
谷口吉生ですか、いいですね。京都国立博物館百年記念館(2013年完成予定)も楽しみです、expoのアトリエからもすぐ近くだし。


兎も角甘いテイストのデザインは苦手、モダンで水平ラインが好きだということでした。直線系ですね。
「ルフトハンザのデザインとかカラーが好きですね、ロシア・アヴァンギャルドなんかも。お店もクールな方がいいです。」
というわけで内装の希望は「ドイツっぽいこと」になりました。え、ドイツ?
底引き網に引っかかったような気分です。さすがノリさんの親友だけのことはあります。


といって借りて来られた寺町丸太町の物件がこれです。

外観 2F部分


蔵ですね! 和風建築ですけど。 
寺町丸太町の角にある雑貨屋「巧」さんの2階と、その東に建っているビルの2階が中で壁が抜けて行き来出来るようになっていて、その2部屋を続きで借りると。
これまた特殊な物件があったものですね。



ビル側の内装



蔵側の既存内装 
天井が低い。是非抜いて梁をみせたい。



方や鉄筋コンクリートのビル、もう一方は和風の蔵。和食と洋食を同時に食べるような気分です。これを一つの店としてデザインします。

うむむ。

しかし日本人ってとても柔軟というか節操が無いというか、割と色んなスタイルに順応出来てしまうんですよね。
カルパッチョサラダの次にみそ汁が出て来てもなんとなく大丈夫な気がしますもんね。
スタイルを丁寧に重んじる方々からはお叱りを受けそうですが、これはもう、纏められる!という感覚としかいいようがありません。
ともかく、和風建築と、RCビルを行き来する時の良い意味での違和感が、デザインのポイントでした。


単純に和洋折衷で雰囲気の良いものを目指すのではなく、折角それぞれ個性があるのだから、ビル側は、RC躯体の持つ質感や迫力、直線を活かすこと。
そして蔵側は天井を抜いて、大きな梁などを視界にとどめた上で、懐かしいのに見た事がないような、どこかを特定しなくてもよいような空間になるように、と考えました。

近未来を舞台にした映画の中で意図的にアンティークなものや、近代的なビルが使われたりするのに似ているかもしれません。
古いのか新しいのかわからないけれど、半歩先の世界にいるような感覚になるように。

今回もそうですが、古い建物をリノベーションするというのは、その空間が経て来た歴史をどう扱うかということでもあり、
時間をデザインするという観点から、非常に映画的だし、デザインイメージに深みが出せますので、とても面白いと思っています。
特に京都は熟成された建物が多いので、味わい深さなど、古いものに潜む価値の発掘作業は欠かせません。
結果としてRITAは、この場所と時間ならではの、味のある店にすることが出来たと思っています。


窓からは御所の緑が一望できる



ミッちゃん、とても素敵な店になりましたよ。
「うん、ドイツっぽい、ドイツっぽい!」
・・・。お互いドイツのことはあまり気にしていなかったのでした。

「ヘアサロン rita」 おおらかな雰囲気で営業中です。

是非、皆さんも気軽に行ってみてください。
内装以上にミッちゃんのハサミさばきに惚れ惚れされることと思います。


次回は、いくつかこだわった箇所について書きます。


一級建築士事務所expo 山根