大山崎山荘大茶会で仮設の茶室を製作しました。

今月の初めに、国民大文化祭in京都というイベントが行われたのですが皆さんご存知でしたでしょうか?「まゆまろ」という卵に目がついたようなイメージキャラクターを様々な場所でご覧になったかも知れません。
毎年各都道府県持ち回りで行われている企画なのですが、今年の開催地が京都府だったのです。
京都市内の各地でも様々な関連イベントが企画されていたのですが、利休ゆかりの「待庵」がある事でも有名な大山崎町では「大茶会」を開催することとなりました。
大山崎町といえば、アサヒビール大山崎山荘美術館があることでも知られています。立派な山荘スタイルの旧館、モネの「睡蓮」を展示している安藤忠雄設計の新館と、広大な庭園を持つ、京都でも人気の美術館ですが、こちらの美術館でも大茶会が開催される事になりました。
今回ひょんなことから我々に美術館より、庭園で行われるお茶会の為の仮設の茶室を考えて欲しいという依頼を頂戴しました。
お茶会の亭主は公募により集められ、美術館ゆかりの方々や、近くの高校の茶道部、小学生の子ども達などとバリエーションに富んでいます。それらの人々が茶会を開き、当日やってくるお客様を迎える為のお茶室を、この広い庭園の景観を生かして、4ヵ所設置するという事となりました。

恥ずかしながら茶道に関しては全然知識のない我々が、果たして皆様にちゃんと使って頂ける茶室を、簡単につくる事ができるのか?
色々と思い悩みましたが、付け焼刃の勉強で何とかなる世界ではない事ははっきりしていましたので、我々がベースとなる装置を用意して、その上にお茶会の亭主を務める方々が、それぞれでお客様を迎える為のしつらいを工夫して頂くいう方向で進むことになりました。


この大山崎町近辺は昔から竹林の豊かなことでも知られています。美術館の方より、大山崎町内の竹林の維持管理に尽力しておられる大山崎町竹林ボランティアの方々を紹介して頂き、材料として大量の竹を分けて頂くことができました。これをメインの材料として使って何か面白いことができないのか皆で知恵を絞ります。
「丸竹のまま使うのは接合が難しそう。割った竹を使うのはどうだろう?」「少し調べてみると割った竹を使ったドームは色々と作られているね。同じような物をここで繰り返すのも能がないなー・・・。」など等。
その後、簡単なラフ案を携えて実際に竹を切ったり曲げたりしてみる事になりました。

山崎聖天のそばにある大山崎町竹林ボランティアの方々の作業場にお邪魔しました。

斜面を登っていった竹林の中に突如現れる作業場はまるで秘密基地か忍者の砦のようです。こちらで実際に竹を加工する方法などをボランティアの方々に教えて頂きました。

鉈を使って割るのかなと漠然と考えて行ったのですが、教えて頂いた方法は鎌を二丁使って割っていく方法。確かに叩かずにも鎌の柄をこじっていくと自然に割れていきます。

ある程度割れが進んだら、その辺りの立ち木の竹に押し当てて、引っ張る方、押す方に分かれた二人でさらに割っていきます。
文章で書くと簡単なのですが、実際は竹によって、また竹の部位によって、きれいにまっすぐ割れる時と、グニャグニャと曲がって割れていく時と様々で、色んな方向に力を加えて調整しながら少しでもまっすぐになる様に割っていくのはなかなかの苦労でした。

割った竹がどの程度の反発力があるのか?それを利用しようと考えていたプランだったので、そのためのテストもします。

大体考えていた事が実現できそうであったので、その後何日かこの竹林に通いつめ合計で150本程の割った竹を材料として用意しました。10月の後半にしては暖かい日が続き、汗まみれになりながら蚊に追われる作業でしたが、静かな竹林での作業はなかなか面白い体験でした。


庭園で開かれる茶会の為、茶室が設置される場所はフラットではありません。また雨の日のことを考えると床がある程度地面から離れている事が必要かと考え、我々のアトリエで床となるパネルを製作し、それをベースに現場で組み立てていく事になりました。

木製のベース部分の製作はかつてT-roomで活動し現在、東京で活躍しているFactoryCampの岩瀧君に協力してもらいました。


ベース部分に割った竹を取り付け紐でテンションをかけ曲げていきます。部材によって反発力が違ったり、曲がるポイントがずれたりで、なかなかカーブが揃いません。

しかしながら何とかそれなりの形にすることができました。

茶室側と水屋側両側に屋根のかかるバージョンもあります。

大山崎山荘をバックになかなか良い感じにできました。


作業中は本当に天気が良くて、このままでは当日和服でお茶席に立つ方々が暑すぎるのではと心配になり、日よけを急遽検討したり、雨よけのシートも用意しました。

庭園の入口に設置する受付ブースも製作しました。


平日の素晴らしいお天気にも関わらず、土日の開催日当日は生憎の雨。
おかげさまで用意した雨よけのシートも大活躍でした。

また雨にもかかわらず、参加してくださったお客様、亭主を務めた方が皆さん楽しんで下さった様で何よりでした。

西乙訓高校茶道部の方々の茶席。和服でお出迎えです。

子ども茶会のお茶席周辺では雨にも負けず、子ども達は楽しく遊びまわっています。


参加者の皆様、当日来て下さったお客様方、そして当日まで走り回っておられた運営スタッフの「NPO法人子どもとアーティストの出会い」の方々本当にお疲れ様でした!
またこのような機会があれば是非参加してみたいと思います。

一級建築士事務所expo