THE NATURAL SHOE STORE

三条麩屋町下がるの町家にて、自然な製法や身体にあった靴を取り揃える店
「THE NATURAL SHOE STORE」京都店がオープンです。



店内に並んでいる、素敵な靴などは、ショップのホームページをご覧下さい。
履きたくなるのが沢山あります。

ホームページはこちら↓
「THE NATURAL SHOE STORE」



以前は呉服屋さんが営業しておられた居抜き物件を、同じく物販である靴屋さんにリノベーションするということで、構造に大きく手を加える箇所がなくて済む分、既存ブランドのもつイメージと内装を効率的にアジャストさせていく、というのは、案外繊細で骨が折れるものでした。

リノベーションの醍醐味の一つは、以前の空間がこんな風になったのか!という「サプライズ」にもあるわけです(通りすがりの一般のお客さんにはあまり重要ではないことかもしれませんが)。
しかし大幅に手を加えなくても無理無く使用出来る居抜き物件の場合、そういった感動には期待し難いので、我々としては、曖昧さを避けるため、軽微な箇所であっても、デザインの必然性を感じられるようにするためのストーリーを紬だす必要があります。そうするのが楽しいのです。
というわけで今回のテーマは「町家内部と外部の併存」と「からだを支える靴と椅子」というようなことですすめました。
まあ、あまり小難しいことを言っても仕方がないんですけれども。




町家の魅力の一つとして、「暗さの中にて自然の光を楽しむ」、という説明がされることがあります、それはその通りなのですが、ファサード側をガラスショーウィンドウとして開放的に使う店舗の場合、どうしても明暗のコントラストは中途半端になりがちです。それで単に光と影、という枠組みで語るのではなく、外部と内部の空気感のギャップを店内においてじわっと味わえる空間に出来ないかと考えました。


靴というのは日本の場合ですと基本、家の外で身につけるものですので、特に町家の店舗に土足で足を踏み入れる時、居心地の違和感というか、不思議な心地がするものです。畳に土足であがる時の全身から汗が吹き出る感覚は、止まったエスカレーターを上り始める時の気持ち悪さにそっくりです。・・・でもないですか。
そのなんとも言葉に表し難い気分をポジティブに転じ、心地よいと感じられるように出来ないか、町家の中にいるからこそ感じられる「外部空間」を造り楽しんでもらえないか、ということを念頭に置きながら完成させました。

それはそのまま商品の持つ雰囲気の良いイメージと重なりあうはずです。



吹き抜けの天窓からの自然光により、外部を彷彿とさせる場所には壁一面に大谷石を使いました。
大谷石は、古くから石垣や石塀、外壁などに使われてきた、宇都宮市大谷町で取れる石のことで、外部に使われる石というイメージが残っています。
石と石の間には無垢のタモの木を帯状に入れ、野暮ったくならないように。
上部に空間の広がりを感じさせる「側繋(かわつな)ぎ」が、町家の持つ木組みの構成の魅力も伝えてくれます。



要所要所にグリーンを配置するとしても、町家の中に自然な緑が存在する、というのは逆に不自然さを感じるかもしれないので、外部を連想させる場所にだけ存在させます。



お客さんを迎え入れる「奥の間」を、ほんのり明るく照らすのは「庭」からの光です。
庭は偉大ですね。季節によって光の状態が違うし、それを四季折々楽しめる。
町家という建物と坪庭がコラボレーションしているのを見過ごすわけにはいきません。
何足かの靴達にも屋外に散歩にいってもらいましょう。



庭を眺めると同時に商品も眺める、絶好のディスプレー場所とすることで、内部を少しばかり外にはみ出させてみました。
町家のもつダイナミックな構成が、商品の邪魔をせず、魅力を増す方向に向かっていれば何よりです。


・・・次回は、店内に数多く配置された、素敵な椅子達についてです。


一級建築士事務所expo