喫茶六花移転工事の続きです。

前回の続きです。今回は工事中・完成編です。
躯体の様子が分かった所で傷んだ部分を補修し、プランに合わせて新しい材料を組み込みます。



新しい床レベルに合わせて土間にコンクリートを施工していきます。



この建物に元からあったもので残したものの一つが「井戸」です。元の台所があった場所に昔の井戸が蓋された状態で埋められずに残っていました。調査の結果さらに8m程パイプを打ち込むことで植木の水やりに使う程度の水量が充分確保できる事が分かったので、元の井戸の底面にポンプを据付け井戸水を汲み上げています。近くの商店街にも、今でも井戸水を活用されているお店がある事を井戸工事の業者さんから伺いました。やはり京都のこの辺りは少し掘るだけで結構水がでるのです。



カウンター周りの木工事が進んでいきます。壁は隣家と共有なので触れません。内側に新たに下地を組み直し壁面を作っています。



壁と天井は塗装で仕上げる予定ですが、その下地として一度クロスを張っています。カウンター腰壁にもタイルが貼られています。大分完成時のイメージが見えてくるようになりました。



塗装です。壁と天井は真っ白に見えますが実は淡いグレーなのです。こんな感じの道具で調子を見ながら全体を繰り返し塗っていきます。



1階の工事が進むと同時に2階の居住部分も完成に近づいてきました。2階も壁天井床全ての仕上げを新しくやり直しています。天井を元の高さより上げているので部分的に古い丸太梁が見えています。



真ん中に見えるのが大黒柱の2階部分です。左側の明るくみえる方に東大路側の窓があります。



窓前に無垢の木でキッチンカウンターを作りました。窓から東大路が見下ろせます。



1階の店舗に戻ります。今回もベンチソファ等椅子張り一式は村上椅子さんにお願いしました。今回お聞きするまでは知らなかったのですが、こういった毛足のある生地には目があるので、張る方向によって光を受けたときのテカりに結構差があるそうです。色も見る方向によって大分違います。エントランスから入った時に生地面が光り過ぎないような張り方にして頂きました。

ヘッドボードもついて完成に近づいてきました。



一人掛けの椅子と2人掛けのソファはpotitekさんに、古い小学校で使われていたという椅子を参考に作って頂きました。ウレタンクッションだけではなく金属バネも入っているので、かわいらしいながらもしっかりした座り心地です。




工事の最後にエントランス扉のガラスに店名を入れます。手書き文字の職人さんにお願いしました。今ではカッティングシートに取って代わられている事が多いと思いますが、手書きならではの雰囲気というものがあります。



完成した外観です。


店内の様子。
中庭には前のお店の表に置かれていた植物の鉢が引っ越してきました。まるで水の中のような不思議な光の入り方です。

新たなメニューも加わって、新"喫茶六花"の始まりです。
前のお店が好きだった方、これから初めての方、様々なお客様に愛されるお店になって欲しいと思います。

喫茶六花移転しました。

久しぶりの更新になります。
以前にT-roomのメンバーと共に内装を担当させて頂いた喫茶六花が移転することとなり、新店舗の設計・監理も担当させて頂きました。
以前の喫茶六花はこちら

新しい喫茶六花は東山三条下ル、一澤信三郎帆布さんの向側辺りになりました。南隣がデニッシュ食パンで有名な祇園ボロニアさんです。

意外に気付かれる方が少なかったのですが、前のお店は鉄筋コンクリート造のマンションの1階でした。
今度の新しいお店は木造2階建て築90年程の元町屋の改装です。
元の建物はこんな感じ。

京都にはよくあるタイプの何度もの改装を経た元町屋といった感じの建物です。
下の写真は既存キッチン周りです。見えているガラス障子の向うは元々坪庭だったと思われますが、お風呂が増築されていました。

前の住人の方は丁寧に住んでおられたようですが、部分的には痛んでいる場所がありました。









腕組みをして物件をチェックするお施主様。


2階も畳敷きの和室ですが昔の「新建材」で仕上げられていて、味わい深さはありません。


我々は、元物件の良さを出来るだけ引き出す事を普段から心がけているのですが、この建物の「仕上げ」部分に関しては一通り解体して新しい物でやりかえる事にしました。

解体後の様子。奥の中庭部分がひらけて明るい日差しが差し込みます。真ん中の柱が五寸角の大黒柱で十分しっかりしていました。これらの良さを生かして行きたいところです。

今度の六花では1階を店舗、2階を居住スペースとして作ります。新しいご家族の増えたお施主様ご一家がお店の営業を続けながら、お子様の成長を見守っていくことのできる場所を計画していきます。

続 喫茶えぜこ

つづき(前回から読む

お店のオープン予定地は、宇治市がようやく下水道工事を順次行っている地区だったのです。
間もなく店の前の狭い道路も工事が始まり、通行できなくなる、と役所の方から説明をうけました。(もしくは通りにくくなる)。
直ちにお店をオープンさせても、下水道が通ればトイレ工事などは水洗用にやりなおさないといけないし、
営業していても工事の音や通行規制でお客さんは近づきにくい・・。


目の前の道


そこで仕方なく我々の計画は下水道工事が終わるまで一旦保留し、全てすっきりしてからオープンさせましょうということになります。
この時点では私も入江さんも、待たされても半年ぐらいだろうと考えていました。(役所からの通達による)

しかし
道路工事が待てども終わらないのです。掘って埋めての繰り返し。
掘る度に何か出て来たそうです。歴史地区だからね・・。という説明は何度も聞きましたが、結局何が出て来たかは教えてもらえない。
どんどん延び延びになる工事。こんなことなら・・。はい、何も出来ないです。

「souonカフェ」とか。ありそうじゃない?
「喫茶、小路(こうじ)」なんかもいいですね。

自然と会話もゆるくなります。




・・・
およそ2年がたちました。

その間にガス管工事も新たに加わり、様々な業者がやってきては道をザクザクされました。工事業者の方を相手にコーヒーを出せば結構いけたのかもしれません。
もうすぐ終わる、もう間もなく完了です、とじらされ待たされる2年は感慨深いものがあります。
普通のクライアントなら、怒るか、諦めるか、旅に出るかだと思いますが、入江さんは全く焦るそぶりも見せず、でーん、と構えておられました。

「今のうちに、もう少しケーキの試作しとこっと。」
「畑で取れたシソのジュースを作ったので飲んでみて。」
「東京で素敵な照明を手に入れたから、これ店内のどこかに使えないですか。」

まさにどこ吹く風で待ち時間を満喫しておられたのです。
こういう方が佇む喫茶店というのは、自然と「そういう」空間になるはずで、
我々が過剰なデザインをせずに、色んなものを遊ばせておく余白をとっておくだけで、優れて安定した空間へと辿り着くに違いありません。


そのようなわけで、ついに工事が始められるという時には、入江さん、石田工務店さん(大変ご無理を聞いていただきました)、我々には、目指すゴールがバッチリ共有出来ていました。

と、思います。

「やっと工事がはじまりますが、もう終わってしまっていたような気がしますね」
「うん、そろそろ別のお店とかはじめたいわー」
そう、そんな感じです。



ついに工事スタート


「はやくっ壁を珪藻土で塗りましょうよ!」
まだ下地ができてませんから。
「次は床を何色で塗装したらいいの」

と、フライング気味な入江さんに巻き込まれるように、自らも施工に参加してガサガサとみんなで仕上げていきました。
自分たちで土壁(珪藻土)を塗ったり、ペンキを塗ったり、照明を付けたり、過去を振り返ったり、一気に完成まで作り上げていきます。



左:手伝いの長谷川君 右:入江さんのご主人



二階席


吹き抜けから見下ろす


完成


時間もかかり、その他ここには書けない紆余曲折もありましたが、素敵なクライアントと工務店さんに恵まれ、
予想以上に落ち着く空間になったと思います。

皆様、長らくお疲れさまでした。でも入江さん達にはこれからも、ですね。
宇治で一番長居したくなる喫茶店、えぜこをどうぞよろしくお願いします。



喫茶えぜこ

一級建築士事務所expo 山根

喫茶 えぜこ

先日、宇治にてオープンした喫茶店えぜこ
オーナーの入江さんのピリッと趣味の良さが滲み出た、「いい感じ」のお店になりました。


えぜこ店内


クライアントの入江さん(女性)から、自宅の離れを改装して喫茶店がしたいというお話を頂いたのは今から3年近くも前のこと。
我々が以前に内装を手がけた雑貨屋(はじかみ)さんのことを大変気に入っていて、自分でお店を出す時にはこのような雰囲気で、と思いをあたためておられたそうです。そして苦労の末なんとか我々の連絡先を見つけ出して下さって依頼してきて下さいました。ありがとうございます。(その様子はこちら

さて、物件はというと、築80年近くのこじんまりとした木造2階建てだそうですが、早速宇治までお邪魔することに。
ここでは遥か以前には入江さんのおばあさんが塾のような、子供達相手の寺子屋をされていたということで、その名残が・・あれ? 全然ありませんね。



子供教室をイメージした喫茶店にするのは難しそうですね・・。
「べつにそんなこと頼んでないわよぅ。ビシ、ビシッ(←突っ込み音)」
あわ、冗談ですよ。・・入江さんは初対面だというのに、気さくに人の体に突っ込みをいれてくる人だったのです。(注:もうっ何ゆうてんの!て感じで肩などを叩く。その後も何度となく)。
まだ自己紹介もそこそこだったのに馴れ馴れしい、いや、親しみやすい方だ! ということで、心良くお手伝いさせて頂く事になりました。よろしくお願いします。

「それでね、どうしてもここにパカッと上に開く小さな窓が欲しいんですよ。」
「この庭に落ちている手洗いも、新しいトイレに使ってもらえるかなあ」
「入口は、今の玄関の場所じゃなくて、西側がいいですかね」
「予算はこれぐらいなんですけど・・足りない分は私が自分で壁を塗ったりしますから!」
・・・落ち着いて下さい、まずは物件をじっくり見させてください。
入江さんは非常にマイペースな方だということもわかってきました。
こういうわがままな人というのは周りをリラックスさせてくれますよね。もちろん褒めています。


既に内部は解体されたままで長い間ほったらかしになっていたようです。
何本かの柱は足下が綿菓子のようにスカスカに腐っており、梁もちくわみたいにフニャフニャで、土壁も宇治川の流れのようにウネウネと波打っています。

これは、かなり手を加えないと危なくて中にいてられません。
「わたしは、この壁のうねっている感じは好きなんだけどなー」 
好きでも駄目です、これは近いうちに崩落します。
「残念ねー。朽ちている箇所も味があるのに。」 
・・・ですね。残せるところは可能な限りそのままに。

柱などを別の木材で全て入れ替えることも検討しましたが、どのみち壁の量も少なく、ケーブルカーの如く平行四辺形に傾いている家となっていましたので、鉄骨で各所補強することにしました。

「宇治の斜塔としての特許申請でもしましょうよ。」
ピサなら兎も角、京都には傾いた住宅なんて腐るほどありますんでやめときましょう。実際腐ってるんですけど。
「あら、残念ねー」
打ち合わせもサクサクすすみます。


補強に使う鉄骨を剥き出しで見せることで、手を加えながら丁寧にこの家を使っているという意識を喚起し、建物の蓄えて来た時間を十分に味わえるようにしましょう。
二階も客席としても使えるように梁や床をやりかえます。
トイレは外の庭に新たに独立して作ることにして、懐かしい雰囲気というか、のんびり度もアップ。
ええ、良いように表現させてもらっています。


このようにデザインや行程などは着々と決まっていったのですが、さてここで、大きな問題に直面するのでした。

つづく
一級建築士事務所エキスポ 山根

フレンチレストラン コム シェ ミッシェル

お久しぶりです。今回は2009年4月29日にオープンした、フレンチレストラン コム シェ ミッシェル(comme chez michel)のご紹介です。

前回オープンしたレストラン ラ・ターブル・オ・ジャポンの迎さんからのご紹介で、またまたフレンチのお店です。
オーナーシェフの大川さんはパリで5年修行され、そのうち3年を「chez michel」の味にほれ込んで働かれた経歴の持ち主。ということで、今回の第一のご希望は、とにかくパリのビストロにして欲しいとの事でした。そこで、パリのお店の写真が載っている本を何度も見て、最後には内装を見るだけで店名が分かるくらい研究しました。パリのビストロは大勢のお客さんでにぎわい、むかしから親しまれている食堂と言った雰囲気です。今回の内装工事では、そういった食堂をイメージし、外装や内装の素材に極力新建材を使わず、ペンキで何層も塗り重ねられたような古い伝統的なビストロにしました。


床は絶対タイルにしてください、とのご要望でした。たしかにパリの店は白と黒のチェック柄から、きれいな模様の入ったタイルなどが多いようです。しかし、日本の製品ではなかなか味わいのあるものが少なく、シンプルなタイルの組み合わせで何とかデザイン出来ないかと思い、サンプルをたくさんとってコンピューター上でシミュレーション。予算とのバランスを考えながら、最終的にはタイルとフローリングを組み合わせることにしました。

ベンチソファーと椅子の張り地は村上椅子さんにお願いしました。ベンチソファーの方には、ステッチを入れてもらいました。椅子の方は既製品でしたが、こんなこともして頂きました。

照明はフランスのシェミッシェルと同じようなブラケットを探していたのですが、なかなか条件に合うものがなく、既製品とアンティークを混ぜて、シェードを同じものにすることによって統一感を出しました。

そして2階は、8席の小さな部屋ですが、1階とは違ったフランスの田舎風の内装にして落ち着いた感じにしました。

ビストロと言うと大衆食堂のような所ですが、今パリでは、ホテルや星の付いたレストランで修行をしたシェフが、ビストロを開くということが多くガッツリしていて旨い!と言う店が大変流行っているそうです。そういった店で修行された大川シェフのコム シェ ミッシェルも、バター、生クリーム、塩分は控えめでブイヨンでしっかり味付けされた料理は、胃にもたれずあっさりしていて何度も食べたくなる味です。デザートもフランス時代に修行されており、どれもおいしかったです。ドリンクはカフェ工船のコーヒーとエスプレッソ、ムレスナティーハウスのフレーバーティーと最後まで、おいしく満足できます。

皆さんも是非行ってみて下さい。



フレンチレストラン コム シェ ミッシェル

京都市中京区柳馬場通御池下る柳八幡町80番1
http://www.commechezmichel.com/


一級建築士事務所expo

京都市N邸

またまたご無沙汰しております。
先だって、当事務所で設計監理を担当しておりましたN邸が竣工致しましたのでご紹介します。
敷地は静かな住宅街の中にあり、北側で接道していて東西南には2〜3階建ての隣家が建ち迫っています。
「限られた条件の中で、小さな家族のための家を。」というのが施主のリクエストでした。



そして出来上がったのがこの建築面積53m2程の小さな住宅です。木造半二階建で、軒高も隣家と比べると大分低くなっています。

北側ファサードの4つの窓
下側の掃出し窓には室内側に半透明のスクリーン扉を設置し外部からの視線を遮っています。
室内からは上側fix窓通して、北側前面道路向こうの住宅の上に広がる空が大きく見えます。






外観の小ささとは対照的な大きく広々とした内部空間
リビング・ダイニング・キッチンの一室空間全体が吹き抜けています。





南側は隣家が境界際まで迫っていたので、高い位置に四連の内倒し窓を設定し、採光・通風を確保しました。

窓からの太陽の光が時間と共に壁面、天井面と順番に照らしていき、その反射光が室内に広がります。
(外部庇によって真夏は室内に直射日光が入らないようになっています。)





施主家族が共有で使うスタディスペース
デスクと壁面の本棚はそれぞれ7m程あります。
スタディスペース下の1階には寝室・バストイレユーティリティが納まっています。




1.コンパクトな躯体の中にできるだけ大きな家族の生活空間をとること。
2.自然採光、自然換気を最大限利用して快適に過ごせるようにすること。
この2点がこの住宅を作っていく際の最も重要なテーマでした。

広い内部空間を実現するために、構造壁をできるだけ外壁側に押しやり剛性の高い大屋根でそれらの外壁を繋ぐという構成になっています。
また、快適な室内環境にとって重要な断熱に関しては、ロックウール(屋根、床のみスタイロフォーム)による通気工法内断熱を採用しました。
我々にとっても初めての、大きな居住空間(最大天井高約4.5m)であっため、エアコンや温水式床暖房には余裕を見た性能の物を採用しているのですが、先月からこの住宅で暮らし始めた施主より、空調なしでも快適に過ごしているとのご連絡を頂いてほっと胸を撫で下ろしています。


施主のまだ小さなお子様が、ここで日々を過ごし成長して行かれるのと共に、この家もよい時間を刻んで行って欲しいと思います。

expo 武田
http://www.expomade.com
photo:豊浦英明(上4枚)、一級建築士事務所expo(下1枚)

レストラン・ラ・ターブル・オ・ジャポン

久しぶりの更新です。
先日3/18日に、新しいフレンチのお店をオープンさせました。場所は高辻通に面していて、御幸町麩屋町の間になります。
「ラ・ターブル・オ・ジャポン」という名前で、フランスのトゥール・トゥールという街にある「ラ・ターブル」というお店の日本店です。
http://www.latable-jpn.com/

京都はイタリアンは多いけど、フレンチはそれほど盛り上がってないんですよね。
うーむ、京都はパリと姉妹都市なんだけど、フランス料理というと少し敷居が高いような気がするし、イタリアンのパスタのように
フレンチの料理は、と言われてパッとイメージが浮かんでくるものが殆どないよねー、ふむ。
など時々考えることを今回も考えながら、オーナーシェフになられるクライアントの迎(むかえ)さんとまずは物件探しにいそしみました。
迎さん御夫妻は、本当に温厚な方。いい意味で素朴でやさしい雰囲気を持たれるので、逆に我々expoは妥協せずこの人達にぴったりの素敵なお店を作ってあげなければ、と燃えました。
実は、この迎さん、グリグリのノリさんから紹介して頂いたんです。そういう意味でもやはり仕事は「つながり」です。

さて京都は繁華街が限られた小さい街ですし、もとから空き物件も少ないのに、イメージに沿う箱を選ばないといけないので、この段階が非常に苦労します。
此の度も、ここもだめ、そこもイマイチ、あそこがもっとリーズナブルなら、今度こそ、むにゃむにゃと数々の建物を探偵のようにチェックしとうとう、変な面白物件に遭遇しました。高辻通りに面した古い民家の2階。

なんだこれはー!
一階は駐車スペースにするため、柱と壁が一切ありません。上に建物がのっているのが不思議です。
・・・魔法のような建物ということもできる。
建築的に言って、メチャクチャ不安定なのは一目瞭然。地震と言わず、風が吹いても天空に飛んでいきそうな感じです。
もしかして、非常時には下にある車が2階を支えてくれるのかなー。ふふ(涙)。

二階は見るからに天井が低そう! 中が使えるのか!?
まあ、一応入ってみますか。

やはり、想像以上に天井が低い。端の方だと、110センチしか高さがありませんでした。奥の方は立てないのです。
しかし、この屋根裏部屋的な狭さが非常に気に入りました。これは面白くなるんじゃあないかな。
早速迎さん御夫妻をこんこんと説得し、この建物を借りて頂くことになったのです。
ここをフランスの田舎、しかも屋根裏部屋にあるような個性的なレストランにしてみせますっ!

という流れで工事着工。まずは2階を解体し、お客さんが50人ぐらい乗っても大丈夫なように構造補強していきます。
イナバの半分ぐらいです。

明らかに老朽化しており、柱や梁が怪しい。
兎に角一旦すべてをバラバラにしてもう一度組み立てるぐらいの気分で作りあげていきます。
一番苦労したのは、厨房内部の天井高さを確保する為に、鉄骨を補強して床を下げたところの計算でしょうか。
でも、お客さんには関係がないところなので、迎さんにだけ、頑張ってる旨をこっそり伝えておきました。

最終的には最初に頭の中でパッとイメージした雰囲気に限りなく近い空間の完成です。
エントランスはこのような感じ。

漆喰の白に、イメージカラーの青いランタンが美しく映えるように、シンプルにデザインしました。
店名のロゴマークは、ペンキで手描きで描いたのですが、細い字を筆で塗るのは難しい。 
手が震えるんですよ、失敗も許されないし。まあ、頑張りをチェックしておいて下さい。
階段を上がって店内に入ると、このような勾配屋根の、梁があちこちを横切っている不思議な空間となっています。

お店のデザインを考える時に何かの映画をイメージしたりするのですが、今回は好きなデンマーク映画
「パペットの晩餐」の気分でいこう、と思い立ち、素材感や色彩、光などを決めていきました。どこが?というつっこみは無しです。

天井が低く、薄暗い屋根裏部屋という隠れ家的な面白さを損なわないように、天井からの照明を極力排除し、照度を抑えるよう気を配りました。
トップライト(天窓)部分には実は照明が仕込んであり、夜でも光が差し込むようにも出来ます。
でも、店内を暗くして欲しいので、夜は照明はいらないかも・・。でもそれを言ってはアレなんで、いいんです。

さらに、全ての椅子の制作は、我らがpotitek(ぽちてっく)であります。
素朴なタモ材のフレームと、こだわったオレンジ色の生地(もちろん張ってもらったのは村上椅子)、素晴らしい仕事です。

凄く気に入っています。この椅子に座るだけでも、お店に食べに行く価値があります。
冗談ではありません。「どう、ポチ、これでいいかな?」「オッケー」

そして、18日のオープンに先駆けて、食事も頂きましたが、想像していた以上に控えめでとても美味しい味付けの料理を堪能しました。
どれも良いのですが、特にお肉料理やデザートは何度でも食べに行きたくなります。というか行きます。
自分が通える店がまた新たに加わるのは、本当に楽しい。
迎さん御夫妻のこれからの活躍を確信しています。だっていい店ですから(自画自賛含む)。

皆さんも是非行ってみて下さい。
http://www.latable-jpn.com/

一級建築士事務所エキスポ 山根