喫茶 えぜこ

先日、宇治にてオープンした喫茶店えぜこ
オーナーの入江さんのピリッと趣味の良さが滲み出た、「いい感じ」のお店になりました。


えぜこ店内


クライアントの入江さん(女性)から、自宅の離れを改装して喫茶店がしたいというお話を頂いたのは今から3年近くも前のこと。
我々が以前に内装を手がけた雑貨屋(はじかみ)さんのことを大変気に入っていて、自分でお店を出す時にはこのような雰囲気で、と思いをあたためておられたそうです。そして苦労の末なんとか我々の連絡先を見つけ出して下さって依頼してきて下さいました。ありがとうございます。(その様子はこちら

さて、物件はというと、築80年近くのこじんまりとした木造2階建てだそうですが、早速宇治までお邪魔することに。
ここでは遥か以前には入江さんのおばあさんが塾のような、子供達相手の寺子屋をされていたということで、その名残が・・あれ? 全然ありませんね。



子供教室をイメージした喫茶店にするのは難しそうですね・・。
「べつにそんなこと頼んでないわよぅ。ビシ、ビシッ(←突っ込み音)」
あわ、冗談ですよ。・・入江さんは初対面だというのに、気さくに人の体に突っ込みをいれてくる人だったのです。(注:もうっ何ゆうてんの!て感じで肩などを叩く。その後も何度となく)。
まだ自己紹介もそこそこだったのに馴れ馴れしい、いや、親しみやすい方だ! ということで、心良くお手伝いさせて頂く事になりました。よろしくお願いします。

「それでね、どうしてもここにパカッと上に開く小さな窓が欲しいんですよ。」
「この庭に落ちている手洗いも、新しいトイレに使ってもらえるかなあ」
「入口は、今の玄関の場所じゃなくて、西側がいいですかね」
「予算はこれぐらいなんですけど・・足りない分は私が自分で壁を塗ったりしますから!」
・・・落ち着いて下さい、まずは物件をじっくり見させてください。
入江さんは非常にマイペースな方だということもわかってきました。
こういうわがままな人というのは周りをリラックスさせてくれますよね。もちろん褒めています。


既に内部は解体されたままで長い間ほったらかしになっていたようです。
何本かの柱は足下が綿菓子のようにスカスカに腐っており、梁もちくわみたいにフニャフニャで、土壁も宇治川の流れのようにウネウネと波打っています。

これは、かなり手を加えないと危なくて中にいてられません。
「わたしは、この壁のうねっている感じは好きなんだけどなー」 
好きでも駄目です、これは近いうちに崩落します。
「残念ねー。朽ちている箇所も味があるのに。」 
・・・ですね。残せるところは可能な限りそのままに。

柱などを別の木材で全て入れ替えることも検討しましたが、どのみち壁の量も少なく、ケーブルカーの如く平行四辺形に傾いている家となっていましたので、鉄骨で各所補強することにしました。

「宇治の斜塔としての特許申請でもしましょうよ。」
ピサなら兎も角、京都には傾いた住宅なんて腐るほどありますんでやめときましょう。実際腐ってるんですけど。
「あら、残念ねー」
打ち合わせもサクサクすすみます。


補強に使う鉄骨を剥き出しで見せることで、手を加えながら丁寧にこの家を使っているという意識を喚起し、建物の蓄えて来た時間を十分に味わえるようにしましょう。
二階も客席としても使えるように梁や床をやりかえます。
トイレは外の庭に新たに独立して作ることにして、懐かしい雰囲気というか、のんびり度もアップ。
ええ、良いように表現させてもらっています。


このようにデザインや行程などは着々と決まっていったのですが、さてここで、大きな問題に直面するのでした。

つづく
一級建築士事務所エキスポ 山根