グリグリとアヌークとノリさん

我々がデザインを手がけたショップに「グリグリ」「アヌーク」というガールズファッションのお店があります。


↑ gris-gris(グリグリ)の店内

 
 その両姉妹店のオーナーである澤田ノリさんとは、何と表現したらよいか、なかなかの濃いお付き合いをさせて頂いています。今回はその話を中心に。

ノリさんとは7年以上前に、以前働いておられた服屋さんで出会いました。
まもなく独立して、自分のお店を持ちたいということでしたので、是非一緒にお店作りをやりましょうということに。
まだひよっこのexpoも、新しいステージに飛び込むノリさんも、お互いに少し緊張しつつも夢の実現に興奮しながら打ち合わせを繰り返したものです。
その当時のノリさんの口癖は、
「絶対素敵なお店になるわー」もしくは「expoさんがいいお店にしてくれはるわー」というものでした。
これは本当に出会う度ごとに真顔で言われるので、プレッシャーというよりも、お世辞でもやる気がわいてくるものです。かける言葉って重要ですね。もちろん受け取り方も。
そのようにクライアントであるノリさんにノラされつつ、デザインを進めていたある日のこと、収納棚(だったかな?)をどのようなデザインにするか伺いました。
「このデザインと、このデザインを考えてきたんですけど、どうでしょうか」
「えーっ? それを決めてくれるのがエキスポさんの仕事ちゃうのー!」 
「あっ、そうかもしれない…なるほど!」
ハッとさせられました。それまではクライアントの好みに対応出来るように選択肢をいくつか用意することばかりを考えていましたが、時にはむしろ選択肢を消していくことがデザイナーのやるべきこと(もちろん場合による)なのだ、と教わった瞬間になったのです。

そう考えながら、ノリさんの接客の仕方を観察していますと、沢山の種類の服をお客さんにあてがって、「こちらも、そちらもどちらでもお似合いですよ」などとは言わず、ただ一点だけ選んで「これが一番あなたに似合ってると思うわー。」と自分の主張を絞って自信を持ってプッシュしておられることが多い。
なるほど客の立場になってみると、とても安心感がある接客の仕方だ、と思ったわけです。大変勉強になりました。
それ以降、ノリさんとのペースを掴んだ我々は、デザインをクライアントに気に入ってもらうこと、そしてこちらも自信を持って提案することのバランス感覚を徐々に養う事が出来るようになり、無事にグリグリは完成したのでした。大変充実した時間でした。 


↑ グリグリの看板


そして5年後、
「新しいお店をオープンさせたいので、expoさんに頼むワー。いい店になるねー。ありがとうー。」
と新喜劇並みの自己完結した依頼を頂きました。相変わらずの攻めの姿勢です、毎回刺激になるわ、ありがとうノリさん。
で、何かヒントを頂けますか? 「今回は、異国の中のパリ、でお願い」
うむむ、わかるようなわからないような‥。「ズバリのパリっぽいのは駄目だということですね。」
「あと、この鏡を飾りたいので、この雰囲気にあう感じ」 
「こ、これは‥! むしろ中華っぽいなあ。中華風フレンチか‥?、混乱してくるのでそれ以上あまり考えないようにします。」
「うん、そんな感じでよろしく」 て‥どんな感じか。それは、もうお互い何となくわかっているのです。いや本当。
そんなこんなでAnoukはとても気持ちよくポンポンっとイメージが出て、納得しながらお店が作られていきました。gris-grisの時から色んな意味で我々も進歩していることを実感し、ノリさんにはいつも素晴らしい機会を与えてもらえていることに大変感謝しています。


↑ Anouk(アヌーク)の店内


 そして先日。
「Anouk用に新しい看板が欲しいのー。私が気に入るようなのを作ってねー」と電話がかかってきました。
オリジナルの看板作りというのは大変に難しく、これまでも色んな場面で苦労してきましたが、ノリさんに言われたら断れないのです。
なんとかアイデアを形にしようと試行錯誤した結果、(本当に動く)時計をモチーフにした看板を考えてみました。こんなのでどうですか。

「す、すごい、どうして私が最近時計にはまっていることを知ってるん!さいこう!」 いや、知らんけど。
・・・ついに言葉にせずともわかりあえるようになってしまったのでしょうか。 

そんな冗談はともかく、これからもノリさんとは色々と楽しんでいきたいと願っています。また面白い仕事、しましょうね。

expo 山根
一級建築士事務所expo http://www.expomade.com/